知らん顔

猫がヨボヨボになりながらも外を見たがるので窓を開ける。物干し竿にスズメがとまっていてけたたましく鳴いている。差し詰め「オマエヨワッテル!!シヌノカ!!シヌノカ!!」と問い詰めているようなカンジ。猫は弱弱しいクラッキングで答える。「死ぬってなんや?」

 

しかし、猫は自分が近い将来この世からいなくなることを全て理解しているような素振りも見せる。こないだ夜中に私の足の間にこれで最後のお別れやとでも言うように寝に来た。いつも猫は金縛りのように重かったのに、あまりに軽くなっていて泣いた。だが軽くても邪魔なものは邪魔である。寝られないのでいつものように足をどける。薄々気付いていたが私はかなりの薄情者なのかもしれない。猫はいつものように4時ぐらいにムクリと起きて部屋を出て行った。私たちの距離はきっと、いついかなるときでもこのくらいがいいのだと思った。

 

私が発狂して部屋で「イヤヤー猫ー!!」と泣き叫んでいたときも、部屋の中にトボトボと入ってきて私を一瞥し、涙を舐めて慰める……でもなく、すぐに去って行ったので笑った。ぎゃあぎゃあ鳴いて、ヘンなヤツ……。とでも吐き捨てるように。

 

猫は毎日確実に弱っている。でも、まだ生きている。自分が病気のことなんか知らん顔をして。