「二重生活」を見た

「二重生活」を見た。人生にどこか虚しさを感じている院生の女性が、修士論文に書く為に無作為に選んだ(と思っている)対象を尾行する話なのだが、主題はあくまでストーキング行為によって露わになる対象者の生活の秘密であると感じた。私は、「尾行した人物の人生を書くこと」についてが主題であると想定して見たため、焦点がずれているようなもどかしさを感じた。

途中、対象者に接触してしまうシーンが一番ハラハラした。対象者である石坂が主人公を「お前の物語は凡庸で面白くない。自分で体験せずに、お前の頭の中で他人の人生を捏ねくり回して、勝手なものを書くんだろ」と論破するシーンでは、推しや自分の周囲の人をマンガにしている自分と主人公が重なった。

ところでこの主人公実は結構しっかりしてるなと思った。
対象者石坂に呼び出された時にちゃんとカワイイ下着を着ていることから、(普段はユニクロみたいなのを着てる描写がある)多分セックスして対象者を説得するつもりが無意識的にでもあったと思う。最後は泣き落としで論文を書かせろと喚くし。そして一度失敗すると次の対象者に自分が傷つかない人物を選ぶ。

主人公は、自分は悪くない第三者だと思っているかもしれないが、その実ぐっちゃぐちゃの狡猾なやつだと思った。また、尾行が終始肯定的に描かれるところもモヤモヤした。主人公もまた誰かに尾行されてるシーンを付け足すことでミイラとりがミイラになる的裁きなのかもしれないけれどそこじゃねぇだろと感じた。

私もまた、主人公のように、なにかがわかるかもしれないと思ってこの物語を見ていた。