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コーヒーが好きなデブの体臭は甘い

男の子ってなんだか、どんなにおとなしそうに見えても、「オレのやり方」を持っててそれで通そうとするよな。私が提案した方法に沿って「なおします」と口で言ったクセに、「オレ流」そのまま提出して案の定やり直し食らってた新入社員を見ながら思ってた。バイトだからかな。女だからかな。よくわかんねーけど私の話はいはい聞いてるふりして全然聞いてないよね。偉い人のいる前では腰低そうな態度して、下っ端しかいない朝はタバコの匂いプンプンさせて始業3分前に滑り込んで来るんだもん。きみ、知ってる? 自意識を手っ取り早く誰にでも認知できる形式に変換したものが体臭なんだよ。どこの誰がそんなこと言ったのかとゆーと、一般人のニオイフェチの私なんだけど。あとこの新入社員は例の社畜マインドじゃない。社畜マインドは研修でなんらかのなにかが引っかかって落ちてもう来ない。だけど私はまだ会社にいます。

 

その会社で落ちこぼれが一人いて、今度そいつがバイトになって代わりに私が正社員になるかもしれないって。正社員って。なんだろうと思った。自分の存在している世界線がおかしくて、久しぶりに軽いパニック発作を起こした。毎日私の中では私の評価がこき下ろしと理想化の間で激しく揺れているけど、私の外の現実は存在していてそこで同じく現実として存在している私の一角は成長しているということになっているのかと思った。それが嬉しいのか嫌なのかよくわからない。いや嬉しいに決まってるけど嬉しいと気取られるのがなんとなく後ろめたくて話をされた時反射的に目をそらした。目をそらした!と思った。本当に嬉しい人間はそんなリアクションをするだろうか。私はある日突然会社を辞める気がしている。ある日突然高校を辞めてしまった日から、今までずっとそうだったみたいに。

 

そういえば「僕、この会社で頑張ったほうなんで残ってるんです」と落ちこぼれが言ってたっけ。こいつ、たまに子供の笑い方をするんだよな。肩から腹から大きな息を小刻みに切って吐き出すみたいな、いつのまにかできなくなった子供の笑い方。あの笑い方まだできる20代後半初めて見たわ。気持ち悪くて気持ち悪くて、でもなんか、お前、本当に楽しいんだなって思っていた。