お世話になっております

バイトB(会社)で電話に出ている。毎日同じ取引先の大体同じ人から電話がかかってくるのに、いちいち「お世話になっておりますぅ~」とかお互い言う。酷い時には一日何回も同じ人と「お世話になっておりますぅ~」と言い合う。それがおかしくて、どんだけお世話になってるんだよと、お世話の正体とはいったいなんだよと居心地が悪いんだけれども、この感覚もすぐに薄れるんだろうなと思う。こないだは初めて会社の客にお茶を入れた。「お茶くみとコピー」=「主に女性がやらされる屈辱とされている仕事」というフィクションのイメージが先行して、お茶くみをした瞬間私の中のなにかが失われるのではないかと思っていたが、なんかごっこ遊びをしているような感覚のまま、あっという間に終わった。会社は形の世界だ。決まったテンプレートで生身の人間のコミュニケーションが覆われて、言葉は一つの意味の信号でしかないようにふるまうのが適切な場所。その辺は楽だ今のところ。

 

ところで私と同期で入って一週間でバッくれたヤツがとんだキチガイだったようで、会社の人がおろおろしていた。みんながそのキチガイからの攻撃やディスコミュからくる怒りを持て余して、そいつがどういう生活をしている人間かを、恋してるみたいな熱量で自由に想像していた。一人が「ああいう人間が生活保護を受ける。それが許せない」と言った。きっと、弱者はしおらしく清廉潔白でなければいけないと思っているんですね、無邪気な人だニャと思った。「かわいそうな人なんじゃないですか」と言ったら、「でも同情できないよ」と返された。私は全然同情しているのではない。他人をかわいそうがることは軽蔑と同じだから。でも言わない。言わないそんなこと。だってテンプレートじゃないし。

 

最近こうして言わないでおく言葉がものすごく多くなってきた。感性が活性化してきたということなんだけど、漫画も描いていないしカウンセリングも長いこと行っていないので吐き出すところが無い。そろそろ醸成されて色々描けそうな気もするし、突然風船がパチンと弾けるように溜まった言葉が頭をぐっちゃぐちゃのパァーにして無職に舞い戻るような気もする。その時はその時でまた年金猶予の届け出を市役所に出して猫と遊びます。