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パラドクスの監獄

日記

大阪にもついにヒトカラ専門店ができたらしいので、この溜まりに溜まったストレスを解消しようと行ってきた。元々カラオケは好きだったし、歌いたくなったら普通のチェーン店にも一人で入っていたが、専門店がどんなところなのか興味があった。

梅田のカラワンというところだ。(ワ○カラではない…)恐る恐る受付を終えて店に入ると、真っ白い壁にドアが並んでいる。一見小ぢんまりした普通のカラオケ店と同じだ。だが、すぐに違和感を覚えた。伴奏やエコーの音が全く聞こえてこないのだ。人が歌っている声だけは方々からする。あまりにも全力なので、なにかを訴えたり叫んでいるように聞こえる。まるで往生際の悪い受刑者の揃った刑務所に迷い込んだようだと思った。個室に入ると、ネットカフェのブースの広さに、ネットカフェみたいな椅子と机、マニアっぽい音調節メモリが並んだ機器とモニターがあり、天井にはエアコンとカラオケっぽい照明が完備されている。目をひくのは、中央を陣取っているプロ仕様のマイクだ。スタンドになっていて持たないで歌えるようになっている。おずおずとヘッドフォンを装着すると、CMが流れてきて、やっと慣れたカラオケっぽい気分になる。どうやら伴奏とマイクを通した声は、全てヘッドフォンから聞こえるので廊下に漏れていないようだ。早速大好きなマッキーの「素直」を入れてみよう。デンモクを操作する時のカチ、コチ、という音があまりにもクリアに聞こえる。性能の良すぎるマイクが音をクリアに拾っているのだ。歌いだすと差は歴然だった。普通のカラオケのマイクは、エコーがボヤボヤしたり部屋が音を吸い取ったりして、かなり声を張らないと自分の声が聞こえない。しかしプロ仕様マイクは、小さめの声で歌ってもきちんと拾ってくれる。それは、どこで音を外したか、どこで声が裏返ったか、椎名林檎の声質をなんとなくマネててもいかに全然似てないかなど、わかっていても認めたくなかったなにもかもが突き付けられるというとだ。ストイックすぎる。しかし利点もあって、音域がちょっと下の方の曲を歌っても全部拾ってくれるから、歌えているような気分になる。高いところも声をはらなくてもいいから喉が疲れない。中島みゆきを歌っているうちにテンションがあがり、あっという間に私は囚人たちの仲間入りをした。

カラオケは社会の縮図だ。選曲、テンション、リアクション、相槌、飲み物を頼むタイミングまで、気を使わなければならないことが山ほどある。でも、あの人が実はこんな歌を知っていただとか、この人が意外と歌う時の声がカワイイだとか、普段とは別な角度からコミュニケーションが深まる場でもある。それらすべてを煩わしいものとして逃げ出してきた者たちが、昼下がりの薄暗いヒトカラ専門店に閉じ込められていた。私たちの罪状は他人を拒絶したことだろうか。そんなことを考えながら、そこにいない他人への愛を歌うエモいバラードを入れまくった。スワロウテイルバタフライとかです。