読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、

日記

目の前の道路で若者たちのはしゃぐ声がする。男女混合、3、4人のヤンキーだ。どこかで酒を飲んだ帰りなのか完全に出来上がっている。ふと、「エクスペクトパトローナム!!」ハリーポッターに出てくる呪文を叫ぶ元気な男の声がして、なぜか生まれて初めて警察に通報しようと決意し、1階に降りて受話器をとった。

「通報する。警察って110番だっけ?」

と母に聞くと、

「通報しぃー。でも110番? 110番ってホンマのやつやで?」

母はこのようにして、私のやることを、心では否定しても言葉では絶対に否定しない。それは私が成人してから、頭が爆発して小さい頃の不満や受けてきた抑圧をぶちまけてしまった所為で、母にかけてしまった呪いのような習慣だ。『私、もうなにゆーたらええんかわかれへんから、なんも言わんことにしてる』。だから母はいつも大体態度と言葉が一致していない。今回だって本当は、「はぁ? 110番? 大げさやろw」ぐらいに思っているに違いない。その本心が語尾を『110番ってホンマのやつやで』などと濁させている。しかしそもそも私が一瞬にしてこうした認知の歪んだ思考を行ってしまうこと自体アダルトチルドレン的な私の性質のなすところで本当は母は別に私のことなんかなにも考えていないのではないだろうか…という粘ついた脳味噌を振り切るように、サクッと通報した。電話は出前でも注文するように済んだ。一部始終を鍵垢にツイートした。突然、「通報者が私だとバレるのではないだろうか?」「そして、こんな時間に騒ぐような話の通じないカンジのやつらに復讐されるのではないだろうか?」という不安にかられた。周りの家は寝静まっていて、きっと私の部屋からだけ、外に煌々と光が漏れているからだ。これでは通報者はここですよと言っているようなものだ。電気を消して、唯一光るPCの画面でツイッターを見ながら、外の様子に耳をそばだてた。灯火管制か。空襲か。パトカーは一瞬でやってきた。外の若者たちが抵抗してなにかをやらかして、国家権力によって輝かしい人生がズタズタに傷つけられればいいのに。などと思いながら、窓際に息を潜めて立っていた。そんな劇的なことなど起こるはずもなく、若者たちは散り散りになっていった。「またねー。」「またねー。」。私は散らかった部屋で白い壁をしばらく見つめていた。