アナと雪の女王キメました。かなりこじらせてる長女の私です。事前に「Let it go」を聞きまくり、その歌詞から、長女の囚われた手枷を解放してくれる映画を期待していったら、どっこい足枷もついてたぜってことを確認しにいくような映画でした。癒されて流れる綺麗な涙を拭うために持って行ったハンカチを、口惜しさで噛み締めることになるとは…。続きでネタバレです。
アレンデール王国に平和が戻りました。エルサは魔法を上手にコントロールできるようになり、結婚するアナとクリストフを祝福するために、はりきって彫像を作っていました。愛する二人の特別の日のために、とびきり美しい二対のオブジェを作らなきゃ。だけど、なかなか納得のいくものができません。
「(きっと、あんなものがまだあるからだわ)」
窓の外を見ると、氷に閉ざされた魔法の城が小さく見えます。ああ、あんなものもう必要ない。あんな暗くて怖いもの、見ているだけで気が滅入る。だって私はもう、「真実の愛」を知っているんだもの。そうと決まれば出発です。
「二人とも一緒にきて。きっといい氷がとれるわ」
エルサは二人をつれて山へ登りました。ピクニックのような楽しい道中でした。「(ああ、はやく私にもクリストフのような恋人ができないかしら…。)」そんな他愛もない夢物語を考えていると、あっという間に頂上についてしまいました。
「さぁ、はりきって壊すわよ!」
「待てよエルサ。やっぱりやめよう」
クリストフは氷の柱を愛しそうに撫でながら言いました。
「だって、このお城は美しいから」 美しいですって。人から逃げる為に、人を拒絶する為に作ったこの恐ろしい城を、クリストフは美しいと言ってくれた。ありのままの私を。
「エルサ。泣いているのか?」
クリストフに言われてエルサは自分が泣いていることに気が付きました。エルサの涙はダイヤのような氷の結晶。クリストフは一瞬、魅せられて手を伸ばします。
「やめて。こないで」
言葉とは裏腹に、その時エルサが感じていたのは喜びでした。 本当は、エルサは知っていたのです。祝福のオブジェがうまく作れないのが、お城のせいではないことを。 二人の様子を見ていたアナが駆け出しました。我に返ったクリストフが、エルサをおいて、慌ててアナを追いかけていきます。
『感じてはいけない。抑制しなければならない』
お父様のいいつけを破り、溶けた氷の心から現れた熱い感情は、実は美しい愛だけではありませんでした。妬み、嫉み、恨み、憎しみ、怒り、欲望。
沢山の『なぜ』。
『なぜ私だけ人と違うの』
『なぜ私だけ人のようにふるまえないの』
『なぜ』『なぜ』『なぜ』。
「ずるいわ。なぜいつもあなたばっかり!!」
エルサが放った魔法が、咄嗟にアナを庇ったクリストフに直撃しました。クリストフは髪の先まで凍りつき、崖の下に落ちて粉々になりました。
「ねぇエルサ姉さん。これも昔とおなじ事故よね。事故だと言って」
縋るようなアナに向かって、
「いいえ。あなたのせいよ。あなたなんて、いなきゃよかったんだわ。私、ずっとそう思ってた。子供の頃からずっと」
「うそ」
エルサは魔法を放ちます。
「愛してるわ、エルサ姉さん」
それが、アナの命が凍り付く最期の瞬間の言葉でした。
完全な冬に閉ざされたアレンデールは、誰も寄り付かない死の王国になりました。その山の頂上に、雪の女王と呼ばれる恐ろしい魔女が棲んでいるといわれます。
「こんなことしたくなかった。でもきっと、ずっとこうしたかった」
魔女の佇む雪の丘に建つ、氷で作られた二対のオブジェ。それは、この世の何よりも輝くとびきり美しい墓標でした。